- 環境問題は様々な要素を含んだ問題なので、いろんな切り口の意見があって当然だと思います。この本は、統計という数字から見えるものを中心としているので、話が明快でハッとさせられることもありました。
しかし、『地球環境のホントの実態』という副題は言いすぎのような気がします。
統計上の数字に置き換えられたデータを見ることができますが、この本では具体的な実態に触れることが出来ませんでした。
あまりにも巨視的な印象を受けます。
石弘之の『地球環境報告書』などは逆に具体例に溢れ、近視眼過ぎるのかもしれません。
二つのバランスが大事なのだと思います。
著者はアフリカなどでも経済成長をすればいいのだということを書きますが、
先進国の繁栄が途上国における様々な搾取によって成り立っているということを考えると、
首をひねります。
この本には経済学的な発想が溢れているけれど、社会学的な知見は見当たりません。
それはそれでいいのですが、先進国の姿が理想であるかのように扱われていることに違和感を抱く人は多いでしょう。
著者によると感情的な批判があったようですが、それも分かるような気がします。
著者自身も感情的なところがあるからです。
レスター・ブラウンに対する執拗な批判は読んでいて気持ちのいいものではなかったのも確かです。
文体も、お説教をしているように感じます。
それも反発を招いた一つの原因かもしれません。著者も一人の人間です。完全に中立であることはできない。
持ってきたデータも自分の都合のいいものを使っている印象を受けました。しかし、それは仕方の無いことでしょう。
もう一つ、反発を招く要素があるとすれば、彼自身は世界中を見て回っていないということです。
石氏は120カ国以上を回っているので文体に鬼気迫るものがある。
これも好みの問題ですが。
この本も、環境問題のほんの一面に過ぎないと思います。読んでも損はない。そういう本ではないでしょうか。
- 本書はとにかく範囲が広い。地球温暖化はもちろん、森林破壊、食料危機、エネルギー資源の枯渇、水、
大気汚染、酸性雨、水質汚濁、化学物質、生物多様性等々、について著者の考えを述べています。
約600ページ有り、この本一冊がそのまま環境問題に関する百貨事典のような感じです。
また、本書のために精査した参考文献の数が凄い! その数なんと2,930!!その全ての出典が本書の最後に載せられており、
「興味ある人は是非自分で調べて欲しい」そうです。
で、結論からいうと、現在の世界は「確実に良くなっている、が、十分には良くない」ということ。
・地球は確かに温暖化しているが、それが与える影響はマスメディアが論じるほどに深刻なものでない、
・森林破壊はあるが、それ以上に再生し、増えている、等々、マスメディアで伝えられるものとは違う結論が導き出されています。
注意したいのは、著者は「だから環境破壊を継続してもよい」と言っているのではないということ。
環境保護に費やす費用を、客観的事実に基づいて世界を取り巻く諸問題に優先順位をつけ、効率的に使うべきと主張しています。
これはマイケル・クライトンと同じ主張ですね。
本書を読んで痛切に感じたのは、一次情報の大切さということ。本書で度々引用される、ワールドウォッチ研究所の
「地球白書」と同じ一次情報を用いているが、その解釈が全く異なるということ。場合によっては「恣意的」に
客観的事実が曲げられて伝えられている可能性が大きいということ。かといって、私のような一般人には
常日頃から本の参考文献の一次情報に目を通すことは時間的にも語学的(学術雑誌は英語で、専門用語のオンパレードですから)
難しいですけどね。
アル・ゴアの「不都合な真実」を本屋でパラパラと読んだのですが、とっても衝撃的ですね。破滅的的な写真で視覚に訴え、
感情に訴える。「保護か、破壊か」のような、分かり易い二者択一を迫っているように感じました。
環境危機を示すデータは見当たりませんでしたが・・・。
環境危機に興味ある方は、環境危機を訴える本 (ワールドウォッチ研究所の「地球白書」や、
レスターブラウンの「プランB」等)とともに、本書を読んでみることをオススメします。 - 「世界は滅びつつある」と何十年来繰り返し続けるレスター・ブラウンのようなハルマゲドン論者、「温暖化」をタネに大幅に誇張された脅迫映像に満ちた講演で世界中を巡業するアル・ゴアなど、人々を脅し続ける輩に騙されないための、データに基づく冷静な議論に基づく著作。
「本当はそれほど深刻じゃないのはわかってるが、地球が危ないと言い続けないと、人々の関心が環境問題から逸れてしまう(大意)」というグリーンピース幹部の談話も紹介されているが、この本自体に対しても同じような意見をいう人がいる。そういう悪質な情報操作をデマゴーグと呼ばずしてなんというのだろう。環境問題はたしかに重要だが、それだけに資源をつぎ込みすぎると他の問題の解決に使えるリソースを減らし、人々を不幸にしてしまう。
そのようなデマゴーグに騙されず、貴重な人命を救うにはどうすれば良いか、正しい知識を身につけるためにも、この本を読もう。「このままでは地球がダメになる、人類が滅びるといろんな人がいうけど、どうすればよいのか分らない」という人も、この本を読もう。悲観的すぎる脅迫から心の健康を守り、何をしていけばよいか、より確かな情報を教えてくれる。
とりあえず、みんな自信を持ってちゃんと働こう。経済成長は人々を救う力を与える源だ。それから、温暖化対策よりHIVや水道を作る援助にもっとお金を出すように、政府に働きかけよう。議員に手紙を書き、投票に行こう。 - ロンボルグはもともとは環境主義者であったが、アメリカのジュリアン・サイモンという著名な「反」環境主義者の著作を論駁しようとして、その正しさを確認したという。
環境問題のほとんどは、何か緊急の政策を要求しているように描かれ、かかれることがマスコミの常であるが、この著作でそういった緊急性はどのような分野にも存在していないことがわかる。
経済学者として気になるのは、環境主義の実践にコストがかかることである。そのようなコストは直接に現在の社会問題の解決にも転用可能だからである。地球温暖化を防ぐために何兆円ものコストがかかるのなら、その金は直接に貧困層の救済に当てたほうが効率がいいのではないだろうか。著者も同意見のようだ。
もう一つの感想は、環境主義に反対する人間は魔女狩りにあって、即座に何の言い訳も許されず断罪される中、環境主義の盛んな西欧でこのような果敢な科学的主張をした著者の勇気に敬服する。 - 著者は、グリンピース支持の環境保護論者で、「地球環境はそんなに悪くない」という記事に反論するためにデータを集めたところ、自分の考えが間違っていたことに気付いたらしい。
この本の趣旨は、本当の世界の状態をはかろうとすること。
数字やトレンドをあげるとき、それが真実であることが、大事なことのひとつであるといっている。
環境分野でも一次情報(原著論文)は、専門的にも優れていてバランスが取れているが、問題は環境知識のコミュニケーションにあると。
この言葉は、ブーメランのように戻ってきて、この本自体を脅かせていないだろうか。
つまり、この本自体も『環境危機をあおってはいけない』という趣旨に沿うようにデータを取捨選択し、論旨に合わないものを無理やり否定していないだろうか。
たとえば、「白血病の原因は相変わらずはっきりしない部分があるけど、命を奪う合成化学物質だけに注目するカーソンは、どうも的はずれだったようだ。・・・略
・・・さらにもう一つきっかけとなる要因が必要で、ここで珍しい感染が関係してくることを多くの研究が示している。」
ここで、著者はカーソンが指摘する白血病の増加はアメリカの都市化進行の結果でしかなかったかもしれない、という結論で締めくくっているが、白血病が感染によるものという考えは、カーソンの合成化学物が原因とする説以上に斬新ではないだろうか。
ゴア元副大統領に対する意見は、痛快でした。